モンマルトルの片隅で

Identites en mouvement

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Institut Sedois では現在サーミ人アーティストの展覧会が開催中です。
サーミ文化、実は以前からとても興味があり、サーミ語をテーマにした制作を考えてたくらいなので、この情報を聞きつけ楽しみに行ってきました。

ずっと昔から追いやられる存在だったサーミ族。彼らのアイデンティティーは今どのように変化し、この世界をどのような角度から見ているんだろう。

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建築家としても活躍するJoar Nango の作品は、生活の中にみられるシンプルな道具等の写真を様々な種類の台に置いて並べたもの。
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プライベートと公共のラインの交差から生まれる一時的な建築物が、どことなくポートレートに見えなくもなかった。

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1985年生まれのAndres Sunnaは、小さな時から既にアーティストになると決めていたらしい。
そんな彼のテーマは彼のサーミ人としての歴史に深く関係している。
代々トナカイの飼育で生計を立てていた家族が数十年前にその権利を失ったことがきっかけで、村八分にあい、その時の衝突が彼の作品のテーマになっている。
確かに彼の作品からの叫びは細部にまでわたり、古いサーミ族の人々と思われる写真もコラージュに取り入れていて、積もり積もる声を聴いた気がした。
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階段を上がっている途中に見られる写真はフランス人作家Celine Clanetの作品。
彼女は2005年からサーミ族の村Mazeに滞在し、人々や家、トナカイ、そしてその土地を撮り続ける。
彼らの生活がきっとこの先何十年もしないうちに大きく変わってしまうであろうという焦燥と共に、美しく自信に満ちた彼らの生活を、そっと残そうとする。
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他にもマレ地区でいつも行くギャラリーをいくつか回っていてGalerie Perrotin のPost-Op展が面白かった。
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展示は面白かったけど、ここのギャラリースペースっていうか、雰囲気はあんまり好きじゃないっていつも思う。
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Kazuko Miyamoyoさんの1972年の作品。カッコいい。

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Eric Baudartの2014年の作品。小さな小さな方眼紙の一本一本の線をカッターで線を引いている。当然はがれてくるマス目もあり、そのスペースが妙に現実的でもあり、そして儚く美しくもある。
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# by bluedandelion | 2014-03-13 01:57 | アート

Ponte City

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現在Le BalでのPonte Cityは、南アフリカ出身のMikhael Subotzky とイギリス出身のPatrick Waterhouse の写真中心の展覧会です。

アパルトヘイト時代、ヨハネスブルクの繁栄のシンボルとして白人のために建設された巨大な円柱タワーアパートメント、Ponte City。90年代に入り、どんどんと町が廃頽するなか、ここの住民も多くが出てゆき、変わりに入ってきたのは黒人のドラックディーラーや娼婦といった人々だった。そして2007年にはこのタワーが買収され、住民たちは立ち退きを迫られる。

作家の2人は5年にわたり、住民にインタビューしたり多くの資料を集めたりする。そしてそれらを、まるで巨大アパートメントから細々と漏れる窓光のようにギャラリースペースにインスタレーションしていく。

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一枚一枚のイメージには多くの物語が詰まっているのだろうと思わせ、実際に同じ場所で撮った住民が立ち退く前と後の写真が重ねて展示されていたのがとても印象深かった。
アパートの窓から眺めるヨハネスブルクは、まるでアメリカの大都市のようにも見えたけど、明るみに出ない闇では底辺での生活をする数えきれない程の人々で埋まっているのだろう。

建物が辿ってきた歴史と、そこの住民が今から辿るであろう歴史の再構成としての写真展、じっくり見入ってしまいました。

4月20日まで
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# by bluedandelion | 2014-03-12 19:50 | アート

Mathieu Pernot

半年以上もアップしていなかったけれど、なんやかんや見ています。

パリも今年は1880年以来、この時期の最高温度を記録するくらい暖かくて、やはり行動範囲はいつもより広がるってもの。今日はJeu de Paumeに行ってみました。

今回の展示は長年ジプシーを撮り続けているMathieu Pernot と、移り行くアメリカの台地を撮り続けるRobert Adams.

1970年生まれのMathieu Pernotは忘れられた声をドキュメンタリータッチで追い続ける作家です。
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記録する写真とは何か、象徴的なイメージの多様性への問いかけ。写真の他にもインタビューした記事や他の記録メディアとしてのオブジェも一緒に展示されています。
ジプシー同様イメージとは移ろいゆく存在で、そこに浮き出る関係性や時間は、歴史の意味というものが常に一方通行ではなく、両方見極めなければならないとの啓示なのかもしれません。

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ジプシーの伝統として、キャラバンの持ち主が亡くなった場合、そのキャラバンは燃やされるそう。

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他のシリーズとして、フランスの大都市郊外のビルの爆破を8年に渡って撮り続けたもの。その場の記憶が傾いたビルの隙間から漏れ出している姿が、社会の歪みからの存在と重なってしまう。

また2階のRobert Adamsの撮るアメリカは、自分の生まれる前の時代だというのに何か記憶になる前の記憶のようで、どこか懐かしいといったら変かな。
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時代を経て、たとえその場にその光景がなくなったとしても、当時はこんななんだったんだよ、この世界に君は存在しているんだよと後世に伝えたいと思った。
アメリカに住んでいた時に見た、車から流れる風景とは地理も年代ももちろん違うのだけれど、それでもその地に流れるスピリットは非常に共通するものがある。
今だからこそ新鮮で、今まで見えてなかった側面にちょっと触れた気がした。

5月18日まで
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# by bluedandelion | 2014-03-12 06:50 | アート

あいちトリエナーレ

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暑い日本の8月。私にとって全く未開拓地の愛知に、トリエナーレを見るため日帰り旅行してきました。

時間の余裕があまりないため、さっそくメイン会場の愛知芸術文化センターから始めることに。
会場地下にはヤノベケンジのサン・チャイルドがお出迎え。

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ソン・ドンの「貧者の智慧:借権園」。古い家具などの再利用で伝統的な庭園を作り上げる。机を並べて橋に見立てたものに上ることが出来たり、ベッドなどで区切られた部屋のなかに入って行けたり、視覚的にも美しいし冒険心を掻き立てててワクワクしました。こういうの好き。

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北野武のデザインしたモザイク画。この空間にマッチしてる。

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ハン・フェンの浮かぶ都市。彼のペインティングもこの繊細な感性は現れていて、現代の生活と伝統的手法を上手く混ぜ合わせた作品。

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「漂流」してきたものに手を加えて、別のものに生まれ変わらせる青野文昭の作品。
ここで展示されているトラックは、東日本大震災の際に破壊されたものらしく、まずその姿に衝撃を受けそれをこのようなカタチでアート作品として展示したことに感銘を受けた。

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1996年のベネチア国際建築展で、磯崎新、宮本隆司らと共に獅子賞を受賞した宮本佳明。作家というより建築家の彼は、単体としての建築よりも、環境の中の建物としてに興味があり、福島原発の模型に神社の屋根をのせていた。その日の午後にあったコンファレンスにも彼は出てきて説明していました。人柄がとても魅力的でした。

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一方物語性のある建物に関心を寄せるソ・ミンジョンの作品は、発泡スチロールで名古屋市市政資料館の地下留置所を再現。場所の記憶や危うさを現す。

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フィンランド出身のミカ・ターニラのビデオは、テクノロジーと芸術の融合の場に関心を持ち、一つの都市がもつ運命を淡々と映し出します。この作家も大好きな1人。

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ドイツ人マルチメディアアーティスト、ペーター・ヴェルツと、アメリカ人振付家ウィリアム・フォーサスによるコラボレーションビデオ。

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会場が変わり、名古屋美術館のアルフレッド・ジャーの作品。福島の被災した学校から残された黒板を持ち込み、そこに日本の詩人栗原貞子の「生ましめんかな」と書いたビデオ作品。ある一定の時間で文字は消える。

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杉本洋と青木淳のコラボ。アルフレッド・ジャーの作品が1階で、彼らの作品が2階にあり、このテイストの違うというか、流れとして暗いほうから明るい未来への趣旨があるらしい。普段絵画でしかみていない彼のテイストを立体に起こすとこうなるのかと、ある意味実験的で面白かった。

コンファレンスのために再度愛知芸術文化センターに戻っていて、そこの話のなかにあった宮本佳明の建物全体を使った作品に改めて気づく。
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このラインは、福島原発の原寸大3D設計図を愛知芸術センターにはめたら、サイズとしては同じようなものなんだよ。福島は決して遠いものではなくて、私たちの生活のなかにしっかりと組み込まれているんだよ、という趣旨のもの。
話を聞くまで注意してみてなかったし、いざそれを聞いたらもうこの会場がそれにしか見えなくなって、ああ、この人すごいなと何度もつぶやいてました。

あいちトリエナーレの今回のテーマは「揺れる大地―われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」。
東日本大震災後のアートを意識したものが全面に出ていて、かといってその主張をただただ叫ぶだけでなく、2年たった今だからこその歴史感や地球レベルでの意識の変化を見つめることができ、慌ただしかったけれども行ってよかったと思える展示でした。
10月27日まで
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# by bluedandelion | 2013-08-29 01:39 | アート

堂島リバービエンナーレ2013

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この夏は日本に一時帰国していて、先週パリに戻ってきました。
すっかりこのブログのことも放置状態でしたが、日本でみた二つのビエンナーレ(とトリエナーレ)のことを自分の忘備録のため、ちょこっと書いておきます。

もう会期はとっくに終了していますが、大阪での堂島リバービエンナーレは前回に引き続き、なかなかホットな話題のテーマを押さえた見応えのあるものでした。
今回は台湾出身のルディ・ツェン氏をアーティスティック・ディレクターに迎え、アジア出身者を中心に28組のアーティストが参加しています。
大型ビエンナーレのような規模ではないものの、今回のテーマ「Little Water」を様々な角度から見つめ、また水都大阪の立地を活かした展示が、会場という箱を超えて内からも外からも響いてくるものを感じました。

上記の写真はMeg Webster。堂島川の水と浄水の対比を表し、改めて水の存在を私たちに気付かせます。

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Wolfgang Laib ドイツ
米やミルクなど自然界のものを素材にしたヴォルフガング・ライプは、金の船を会場に浮かべました。なんだかすごく遠くまで行けそうな気がする。

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高嶺格(日本)
出産する女性から発せられる宇宙とこの場をつなぐ波のようなものを感じた。

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篠田太郎(日本)
造園を学んだ後、「人類の営みが共在するような進化する自然として理解する」ことをテーマに制作。落ちてくる水滴による波紋が静かに広がり、とても詩的な空間を作り出していました。

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金氏徹平(日本)の一部。集めて並べて見るなかに、モノの「流れ」を見た気がします。

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Andro Wekua グルジア
今回一番気になった作家。90年代の民族紛争の目撃者で自らの家族も犠牲になっています。その彼の「黒海ランプ」に、場所と心理の間にある距離や、なにか形にとどまることのできない象徴を感じ、青い光をずいぶんと長いこと眺めていた気がします。

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Araya Rasdjarmrearnsook タイ
西洋美術を全く異なる場-例えばアジアの田舎で畑仕事をしているコミュニティー-に置き、アートと鑑賞者の関係、コミュニケーションとは、を問う。単純なんだけどなんだかくすっと笑える会話や、アジアパワーに元気や誇りをもらい、ぐいぐいと引っ張られるビデオ作品でした。

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会場風景

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会場を上から見たもの。動線がフリーでかつ順序良く配置されているので見やすかった。

程よいサイズのビエンナーレ。また2年後も来たいと思います。

愛知トリエナーレのレポートは次回に。
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# by bluedandelion | 2013-08-28 23:37 | アート

パリはモンマルトルで生活する中で、日々の写真やアートのこと、この街の片隅の匂い等を紹介します。またパリでの撮影等のお仕事も承っております。ご連絡はこちらまで。sakikikiya@yahoo.co.jp
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