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モンマルトルの片隅で

Langages entre le dire et le faire

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数日前にある調べものをしていた際、偶然見つけたFondation Calouste Gulbenkian Paris。
そこで開催されている『言葉』に関する展示が面白そうだったので、行って来ました。

そもそもこの財団は、アルメニア人のCalouste Gulbenkianが、BPとの貿易で潤った財力をもって始めたアートコレクションがことの発端らしい。その後、ヨーロッパ中が戦争の中、中立国の一つだったポルトガルに居を構え、それが今ではパリやロンドンまで広げているとのこと。

さて、言葉に関する展示はやっぱりビデオが多かったけど、他にもインスタレーションや写真も展示されていました。
言葉というメディアをどう視覚に変換させるかとても興味深かったので、色々考えさせられました。

白黒で撮影された写真はAurelien Froment の作品。19世紀終りから20世紀にかけて作られた『理想郷』に集められていた石とは、ただの『物』ではなく、その場の象徴や宗教的な意味合いを含めたもの。その場から切り取られた石の『物』は、イメージとして何が見えてくるのか。
なんだか写真も美しかったし、まさに今考えていることとリンクして、とても個人的には響きました。

Susan Hiller は絶滅しかけている言語のビデオと共に、その言語を解さない者が聞いたらただの音の上下にしかならないものを視覚化したプリント。これもまさにここのところ考えていたテーマだったので、妙にテンションあがりっぱなしでした。というか、消えかかっている言語を実際耳にすることが出来る奇跡に、もうアートとかの以前に生物的に感動した。音ってなんだかすごく素直に身体を傾けられるんだな。
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他に琴線に触れたのはポルトガル作家のFernanda Fragateiro のインスタレーション。
切り刻んだ後に残された本が壁に展示された姿は、風景画か、あるいは抽象画のようでもあります。
それは文字のごとく、最後の言語を彫刻化するという行為で、その姿は儚くもありながら、なぜか前向きの力を感じました。
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全体としては作品数は多くないものの、きっと好きで集められたんだろうなといった暖かみのある作品が多かった気がしました。
ここには図書館やコンフェレンスもあるようなので、今後もお気に入りの一つになりそうです。

そして今日訪れたもう一つの展示は、6区にあるGalerie Catherine et Andre Hug で開催されているRyo Suzuki さんの建築写真。お友達つながりです。
白黒で多重露光したと思われるイメージは、記憶になる前の記憶の破片に似ている気がして、そよそよとした風を感じるような作品でした。
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なんだか今日はモノトーンの作品が多いな?



# by bluedandelion | 2013-04-28 06:35 | アート

Maison Europeenne de la Photographie

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サンポール近くにあるMaison Europeenne de la Photographieでは、昨日から一斉に7人の新しい展示をしています。お天気の日が続くので美術館はあまり込んでなくて、しかも今回の展示はどれも面白かったですよ。

まず上の写真はブラジル人作家のGustavo Speridiao。対のイメージ遊びが個人的にはとても興味深くってワクワクしました。日常生活のなかのパズルというか、イメージで日常を扱うというか、社会的にも歴史的にも心理的にも、まだまだ可能性のある分野だと思っています。

続いてはAlain Fleischer。フランスの出版社Actes Sud のコレクションの一環のようです。
「イメージと音楽」をテーマに、視覚と聴覚をどうマリッジさせて表現しているのか。
中にはそのまま音符を写真に入れ込んでいる作家もいたけれど、彼の白黒写真は視覚の裏にある物語のようなものを暗示させ、粗い粒子がまた別の感覚に移ろいゆくマジックでもありました。
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続いて映画と詩と絵画と写真に魅入られた作家、Philippe Favier の作品は、アーティザナルというべく細かい作業と独特のモチーフ選択で、彼の世界観にみごと惹き込まれました。
彼の作品からは、永い時間が途切れることなく吹き出していて、それを食い止めるかのように金のピンで写真を留めてあったり、影で写し出されている刻印を刻んだりしている気がしました。
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最後は若手日本人作家、Atsunobu Kohiraのインスタレーション。小さな窪みに白い綿布で天井は覆われており、中央には半円のガラスに収められた繭と白い蝶。外界の音が吸収された空間では、中央からカタカタと響く音が、実際以上に固くダイレクトに身体に響きます。触りたいという欲望と内と外との距離感の浮遊具合が、どこか写真というメディアとも共通するように感じました。
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他の作家はClaude Lévêque, André Morain, Stéphane Hette など。6月16日まで。



# by bluedandelion | 2013-04-18 21:18 | アート

Les mille et une nuits

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パリでは最近雨が降ったと思ったら一気にお天気になったりと、フランスでいわゆる「3月の天気」と言われる状態が続いています。でもこれが終われば一気に初夏の陽気になればいいな。

そんな中、前々から行きたいと思っていた Institut du Monde Arabe で開催されている les mille et une nuits 展に行って来ました。
現在フランス62万人の人口の内、4〜7万人はアラブ系のルーツを持つと言われています。パリで生活する中で確かに移民の数の増加は感じるけど、でも本格的にそれらの文化に触れたいと思っても、実はあまり機会がなかったりします。
ここInstitut du Monde Arabe はJean Nouvel建築の、とてもユニークなデザインの建物に美術館やら書店やらカフェが入っています。この一つ一つの窓みたいなのは、太陽の光の量に合わせて大きくなったり小さくなったり、とカメラの絞りの様な働きをします。それがちょうどアラブ模様と重なり、パリの現代建築では珍しく特徴的ですね。

展覧会は終りのないとされている「千夜一夜物語」をテーマにしたものです。
まずはデザイン的にも見とれるほどのアラビア語で書かれた千夜一夜の本が暗闇の中陳列し、その奥には各国の翻訳本なども紹介されています。
階段を上がって上階に行くと、千夜一夜に入っている個別の物語の絵画や彫刻、ビデオ等が展示されていて、どれも子供の頃に知っているはずの馴染みの話が、妙に異次元の視点から眺めている感じがします。(そもそも異国の物語なんだけど)
そして驚くのがアラブ絵画の線の細さ。もう細いのレベルじゃなくて、このような手法で現してくれて初めて認識出来る空間、とでもいうような、触れられない境界的な世界は、いつまでたっても見飽きることはありません。撮影禁止だったし、そもそも暗すぎて写真は撮れそうになかったけど、それでもここで見た絵画のイメージを残しておけないのは残念。
それはそれで十分楽しめたんだけど、ぐるっとひと回りして、あれ?もう終り?的な、ちょっと目玉商品が何かよく分からなかったのがっかりと言えばがっかり。
その後、近くのモスクでミントティーを飲みながら休憩し、もう少し時間があるので橋を渡りマレ地区の方へ。

Polka galeire で見たPatrick Swirc のCarnets de voyage は、去って行った愛する人の面影を追い求めるかのようにして、モロッコ、ベトナム、カザフスタンなどの国を旅するなかで集めたイメージの写真。そこにはデッサンあり、コラージュあり、の特に新しい方法ではないものの、個人の心の中にあるイメージと、外界との触れ合いが、見ていてちょっと新鮮でした。
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またla galerie particulière のAnthony Goicolea の写真も、少年達の独特の世界、残酷さや美しさが写真、ドローイングで現されていて、まあテーマ的にはそれほど個人的には惹かれないものの、イメージが強くて結構ギャラリーをグルグル時間かけて回りました。

そういや今ルーブルの隣ではドローイング展をやっているみたい。時間があれば出かけてみようかな。



# by bluedandelion | 2013-04-13 17:37 | アート

La tenture de l'apocalypse d'angers

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ブルターニュから戻った後、アンジェ城にあるタピスリー美術館に行きました。

ここにはフランスに現存する最古のものと言われているヨハネの黙示録が描かれたタペストリーがあります。1373年から10年かけて織られ、高さ6m、長さなんと133mの大作です。

当時はこんな大きなタペスリーをおける場所もなかったようですが、特別な日のためにと大切にされました。が、時代が遷り、中世スタイルに人気がなくなる時期には、装飾としてではなく雨しのぎや穴を塞いだり、あげるの果てには足を拭く目的でも仕様されていたそうです。

そういった経路を経て、ロマネスクの時代には再び注目され十分な管理が行き届くようになり、そして1950年代には専用の美術館が造られ、今の美術館は二代目らしいです。
やはり専用の展示スペースだけあって、作品が活き活きしているのが分かります。
色のピグメントの損傷を抑えるため、結構な暗さですが、それがかえって神秘的で、現代の展示方法にうまく合ってると思う。
ヨハネの黙示録は詳しくは知らないけど、なんでも一枚一枚におびただしい量の隠喩や暗号が隠されているらしい。このタペストリーについて書かれている本を買って来たので、ゆっくり眺めたいと思います。

色んなイメージが現れては沈んで、本当にこんな空間は大好きです。
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頭が七つあるライオンと竜。素敵じゃないですか。
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あちゃ、思いっきり町がつぶれちゃってますね。比喩だとしてもなんてパワフルなんだ。

下絵がもちろんあったとは言え、こんなのを刺繍で仕上げてしまうなんて驚きです。
そしてバックグランドの絵柄がどれも可愛くて、いろんな妄想が膨らみます。



# by bluedandelion | 2013-04-09 05:39 | 遠出

Bretagne

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先週は3泊4日でブルターニュ半島を一周してきました。
主な目的はケルト文化に出会うこと!またフランス国内でありながら、ブルターニュ独特の言語を持ち、社会的にも文化的にも異国感が溢れる地方を散歩するためです。

ケルト文化は日本の神道と同じく、湧き水や滝、巨木や森などに神が宿るとする自然崇拝の精神が息づいています。そして数えきれないほどの神話や海に関する伝説が埋まっています。またケルティック・クロスに見られる太陽信仰の円環や太陽十字は、東洋でも多くみられますね。つまりユーラシアを通して共通の信仰や文様とも言えるようです。

出発地のアンジェから車で3時間。小さな村々を通り抜け、大西洋まで出ると、ここに伝説のイスの国が沈んでいるのか、とちょっと不思議な気持ちになります。

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ブルターニュの海岸はとても風が強く、ここに住んだ人が精神的に参るというのも分かる気がします。まっすぐ立っていられないし、大西洋からの死者の声も聞こえそう。
日が沈んだ後は一層その厳しさを増し、常に嵐の中にいるかのようでした。

翌日は聖堂囲い地として有名な教会区、St-Thégonnec, Guimiliau, Sizun をお散歩
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どこか東南アジアの石造りの寺院を思わせる雰囲気にテンションがあがります。
外観は数えきれないほどの彫刻や飾りで覆われていたけど、内装はそれほど凝ったものでもなく、なぜかロココ様式でした。

Locronanなどの内陸地を通り、再び海岸に出て来て小さな島巡りや、造船の町を散歩。
道中の標識は全てフランス語、ブルターニュ語で示され、音と土地との繋がりをこんなところにも感じずにはいられません。またブルターニュ地方ではチーズは作られる習慣がなかったのですが、海藻チーズたる珍しいものも見つけましたよ。

さて、三日目は主に南ブルターニュを回ります。
貿易港として栄えた南部を横目に、ゴーギャンが一目惚れして住んでいたというPont-Avenに立ち寄ります。
小川が流れ、水車が回りの放牧的な風景なんだけど、どうも観光客向けのお店が気になりあまり好きではありませんでした。
でも、その村から1キロほど離れた小高い丘にあるChapelle de Trémalo で出会った憎めないキャラや、ゴーギャンの『黄色いキリスト』のモデルになった木像に出会えて、ここに立ち寄ってよかったと思い直します。
12世紀に建てられた教会で、なんでこんな現代的なデッサンのモチーフが残されているんだろう。一つ一つの表情をじーっくり眺めて、すごく豊かな気持ちになります。
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別れを惜しみつつ、その後今回楽しみにしていた ile de St. Cado に渡ります。
ここには12世紀に建てられた教会と共に、海に向かってたたずむケルティック・クロスがとても印象的です。
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ケルティック・クロスを通して眺める地平線には、何世紀も前にも同じように見られたであろう風景に出会えた気がしました。静かで、そしてとても紳士で力強い佇まいで惚れ惚れしました。

その夜はブルターニュに移住した友達宅泊。栗の木とキノコの山に囲まれた伝統的な家屋です。ブルターニュのお家は、前後に大きな二つの煙突が見られるのが特徴です。

翌日、友達が勧めるまでに、La Roche-Bernard まで雨の中、車を飛ばします。
『美しい村』に登録されている観光地の一つらしいので、ちょっと前日のようながっかりしたものにならないかな、と心配していたけど、村奥の開けた場所にある教会に入ってみて、ちょっと今までとは違う空気に痺れてしまいました。
ブルターニュはキリストでも聖母マリアでもなく、マリアの母親の聖アンナ信仰が強い場所だと聞いて来ました。
道中でもいくつかそれらの彫刻は見て来たけど、この教会にあったアンナ像の美しさに、一瞬ガツーンと頭を叩かれたような衝撃を受けました。
素朴で、でも精巧さと凛とした空気を伴って、今回の旅で一番の宝物発見です。
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また天井の星がどこかのブティックのように可愛らしい。

まだまだ小さな村や、センチメンタル海岸、ミステリーなカルナックの巨石群も訪れましたが、それらの話もまた何かの折に触れてお話したいと思います。

ブルターニュは新鮮な魚介類や美味しいブルターニュのお菓子でも有名ですよ。
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# by bluedandelion | 2013-04-09 00:02 | 遠出

パリはモンマルトルで生活する中で、日々の写真やアートのこと、この街の片隅の匂い等を紹介します。またパリでの撮影等のお仕事も承っております。ご連絡はこちらまで。sakikikiya@yahoo.co.jp
by bluedandelion
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